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新しい原作者による新しいリスベットの物語『蜘蛛の巣を払う女』

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龍の入れ墨(ドラゴンタトゥー)を背中に持つ天才ハッカー、リスベットをヒロインにすえたミステリーシリーズ「ミレニアム」。

スウェーデン発のこのミステリー文学は「ドラゴンタトゥーの女」「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」の3部作として発表されるや世界的にベストセラーとなりました。

しかし、原作者のスティーグ・ラーソンはこの3部作を発表した直後に急逝、その後を受けてデビッド・ラーゲルクライツが書いた作が、本作の原作となっている「蜘蛛の巣を払う女」なのです。

『蜘蛛の巣を払う女』あらすじ

天才ハッカーのリスベット(クレア・フォイ)は、義賊的な活動を密かに続けていました。

そんなある日、世界各国の防衛システムに自由にアクセスできるシステム”ファイヤーフォール”を巡る陰謀に巻き込まれていきます。

さらに、彼女に迫る組織とリスベットの浅からなぬ因縁もあきからになるのです。

映画を見るにあったって必要なこと

本作は、2011年のデビット・フィンチャー監督、ルーニー・マーラ主演の『ドラゴンタトゥーの女』(2011)に続くハリウッド版”ミレニアム”映画化シリーズの第2弾となります。

ただし、前述のとおり原作はシリーズの第4弾。劇中で当たり前のように語られるリスベットの生い立ちなどの部分がどうしても唐突な感じがします。

「ドラゴンタトゥーの女」は単体のミステリーとしても成立する作りですが、それ以降の「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」は連続性の高い物語で、さらに謎の発端がリスベット自身に関わってきます。そして新原作者による「蜘蛛の巣を払う女」も、その流れを踏襲しているのです。

そのため、本作を見るにあたっては是非スウェーデン本国で作られたノオミ・ラパス主演の3部作を見ていただきたいと思います。

3代目リスベット、クレア・フォイ

スウェーデンのオリジナル三部作でリスベットを演じたのがノオミ・ラパス。本作で国際的に注目を浴びた彼女はその後『プロメテウス』(2012)『エイリアン・コヴィナント』(2017)などのハリウッド大作に起用されるようになりました。

3部作の成功を受けて、ハリウッドでリメイク企画が進行し、監督にはデヴィット・フィンチャーが起用されました。そしてヒロインのリスベットにはフィンチャー監督の前作『ソーシャル・ネットワーク』(2010)の冒頭に登場したルーニー・マーラが抜てきされ、彼女はこの演技でアカデミー賞にノミネートされました。『ソーシャル・ネットワーク』の冒頭5分間99回のリテイクを重ねたと言われ、それに応え、耐え抜いたことからルーニー・マーラが抜てきされたと言われています。

しかし、そのルーニー・マーラによる『ドラゴンタトゥーの女』も2011年の映画で、7年の時が経過しています。そのため、デヴィット・フィンチャーは製作に回り、さらに新たなリスベットとしてクレア・フォイが起用されました。『ラ・ラ・ランド』(2016)のデイミアン・チャゼル監督の『ファーストマン』(2018)にも起用された若手女優の有望株です。

初代、二代目ともに演じた女優が高い評価を得た役どころを演じるという難問に、クレア・フォイは挑むかたちとなりました。

新たな紡ぎ手による物語と、新たな演じ手によるヒロインの演技、果たしてご覧になった方はどう感じていくのか、その反応がとても楽しみな1本です。

About the author

OsoneRampo

村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年目を越えた映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在作品の配給・宣伝、イベント運営に携わる一方で各種記事を執筆。