リメイクであり、オリジナルでもあるグァダニーノ版『サスペリア』

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“決してひとりでは見ないでください”という日本映画宣伝史に残る名キャッチコピーで一世を風靡したダリオ・アルジェント監督のサスペンスホラー『サスペリア』(1977)。
そのホラー映画のマスターピースを『君の名前で僕を呼んで』(2017)で賞レースを賑わせたルカ・グァダニーノ監督がリメイクしました。
『サスペリア』あらすじ
1977年、冷戦真っただ中の西ベルリン。そこでは過激派ドイツ赤軍の爆破テロが頻発、またルフトハンザ航空機のハイジャック事件が発生し、街中に不穏な空気が漂っています。
トップダンサーを目指すアメリカ人女性のスージー(ダコタ・ジョンソン)は名門として知られる“マルコス・ダンス・カンパニー”の入団オーディションを受けることに。カンパニーの指導者でもあるマダム・ブランク(ティルダ・スウィントン)に認められたスージーは念願の入団を果たすのでした。
その一方で、カンパニーのダンサーのパトリシア(クロエ・グレース・モレッツ)が謎の失踪を遂げるという事件が起きていました。パトリシアは精神科医のクレンペラー博士にマルコスカンパニーは魔女の巣窟だという言葉を残していました……。
異色かつ実力派の陣容
ヒロインのスージー役に「フィフティ・シェイズ」3部作のダコタ・ジョンソンが抜擢されたほか、特殊メイクで3役を演じるティルダ・スウィントン、クロエ・グレース・モレッツなどの実力派女優に加えて、オリジナルの『サスペリア』でヒロインを演じたジェシカ・ハーパーも出演しています。
また、オリジナルではイタリアのロックバンド“ゴブリン”の音楽が大きな話題になりましたが、今回はイギリスのバンド、“レディオヘッド”のトム・ヨークが音楽を担当。トム・ヨークが映画音楽を担当するのは本作が最初の作品となります。
グァダニーノ監督による新生『サスペリア』
ダリオ・アルジェント版『サスペリア』の上映時間は99分、これに対して本作は上映時間が152分という長さの作品となっています。
それというのも、オリジナルではアルジェント監督が新たなオカルト映画のエッセンスとして当時の社会情勢や舞踊を取り込みましたが、あくまでもエッセンスとしてちりばめるだけにとどめていました。
対して、グァダニーノ監督はそのエッセンスの部分をストーリーの本筋にしっかりと絡めてきたのです。そのため、映画の半分は独自のサスペンスホラーとして成立することになりました。
70年代の冷戦の状況、ベルリンで起きていた事件や欧米圏で魔女という存在がどれだけ忌避されているかなど、いくつか予備知識が必要になりますが、圧倒的なスケールで描かれるクライマックスの儀式も含めてまったく違うオリジナルの『サスペリア』が誕生しました。