守る男と守られる女──切なくほろ苦い恋を描いたラブサスペンス『ボディガード』

『ボディガード』© Warner Bros. Entertainment Inc.
『ダンス・ウィズ・ウルヴズ』(1990)でアカデミー監督賞と作品賞に輝いた俳優ケビン・コスナーと、歌謡界のスーパースターであるホイットニー・ヒューストンが共演。全てをかけて依頼人の命を守る元シークレットサービスでプロのボディガードであるフランク・ファーマーをケビン・コスナーが演じている。
そしてフランクに守られるスーパースターであるレイチェル・マロンをホイットニー・ヒューストンが演じた。守る男と守られる女の切なくほろ苦い恋を描き、世界中で大ヒットを記録したラブサスペンスだ。
女優デビューを飾ったホイットニー・ヒューストンの初々しい演技のみならず、数多くの歌も堪能できる。また、ケビン・コスナーは主演だけでなく製作も務めた。
『ボディガード』あらすじ
かつて、カーター大統領とレーガン大統領の警護をつとめた経歴を持つ元シークレットサービスでプロのボディガードであるフランク・ファーマー。その彼の元に、ある警護の依頼が舞い込んでくる。
華やかな世界に生きるスーパースター、レイチェル・マロンの警護をして欲しいというのだ。
じつはレイチェルには多くの脅迫状が送りつけられており、彼女のマネージャーがフランクに警護を依頼したのであった。当初、レイチェルには危機意識が全くなく、フランクを邪魔者扱いしていた。
しかし、レイチェルはナイトクラブで押し寄せてきたファンからフランクに助けられたことから、次第に彼に協力していくようになる。やがてフランクとレイチェルの間には恋が芽生えていくのであった。
ケヴィン・コスナーの完璧な演技
『アンタッチャブル』(1987)では凶悪なギャングに立ち向かう財務省特別捜査官、『JFK』(1991)では未だに数多くの謎に包まれたケネディ大統領暗殺事件の謎に独自の視点で迫る地方検事を熱演したケビン・コスナー。
本作『ボディガード』(1992)では大統領警護を務めた経歴を持つ元シークレットサービスでプロのボディガードであるフランク・ファーマーを演じている。高額の報酬と引き換えに依頼者の命を守る男だ。決して感情を出さずに警護に徹している。一見すると完璧な人間のように思えるボディガードであるが、人間的な一面を見せるシーンがある。
「その場にいないことが怖い」とコスナーがセリフを言う。自分が非番だったとはいえ、レーガン大統領が狙撃された時にその場に居合わせなかったことを悔やむ気持ちがにじみ出ている。
そしてレイチェルと一夜を共に過ごしたことに困惑するシーンもある。「こんなことじゃ君を守れない」と感情を露わにするシーンだ。ボディガードという仕事柄、決して感情を出さないからこそ、コスナー演じるフランクの困惑が強く伝わってくる。
『ボディガード』の隠されたエピソード
ローレンス・カスダンが脚本を執筆し、ケビン・コスナー自らが製作と主演を務めた大ヒット映画『ボディガード』は当初、スティーブ・マックイーンとダイアナ・ロス共演で脚本が書かれていた。
しかし、マックイーンとロス共演での映画化は実現できずに終わったが、コスナーとカスダンが縁あって共に仕事をしており、カスダンの脚本をコスナーが覚えていたのだ。
コスナーは主演のみならず製作も務め、共演に歌手のホイットニー・ヒューストンを指名して映画化が実現した。
映画は公開されると大ヒットを記録した。映画のヒットと共に主題歌「オールウェイズ・ラブ・ユー」を収めたサウンドトラックも大ヒットを記録した。
さらに、映画『ボディガード』は続編が企画されていたと、ケビン・コスナーがあるインタビューで明かした。共演はイギリスのダイアナ元皇太子妃だった。
続編の舞台は香港で、コスナー演じるボディガードが元皇太子妃を警護していくにつれて恋が芽生えていくという内容であった。
しかし、1997年8月31日にダイアナ元皇太子妃がフランスのパリで交通事故死したことで続編は実現しなかった。皮肉なことに彼女の元に脚本が届いたのは事故の日であったという。