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大泉洋に当たり役『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』 ── 悲劇は笑いに包んでこそ

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© 2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

幼い頃に難病の筋ジストロフィーを患い、20歳まで生きられるかどうかといわれながらも40年以上の人生を歩んだ実在の人物・鹿野靖明。そんな彼の半生をつづったノンフィクション書籍「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」(文藝春秋刊)を、虚実を混ぜ合わせながら映画化。

口から生まれたような、天性の人たらしという主人公にはこれがまさにはまり役という大泉洋。実年齢より10歳若い役どころも難なくこなしています。さらに10キロの減量をして“筋ジストロフィーの患者”になり切りました。共演であり、フィクションの原作と、映画というフィクションのブリッジ役に三浦春馬と高畑充希。

『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』あらすじ

© 2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

美咲(高畑充希)は、恋人の医大生・田中(三浦春馬)に会うため、彼が参加しているボランティアの現場を訪れます。そこにいたのは大勢のボランティアに囲まれて、あれこれと世話をしてもらっている鹿野(大泉洋)の姿が。

筋ジストロフィーを患い首と手しか動かせない鹿野でしたが、“人に物事を頼む勇気”を武器にボランティアに囲まれて自由に生きています。

流れで、夜のボランティアを田中とすることになった美咲は、鹿野から突然「バナナが食べたい」と言い出します。あまりのわがままぶりに怒り心頭の美咲ですが、鹿野はその姿にすっかり魅了されてしまいます。美咲は、田中との関係を切り出せないままボランティアをすることに……。

屈指のはまり役、大泉洋!!

© 2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

人たらしで、無理を頼まれても何となく許してしまう。これは大泉洋のことではなく、モデルとなった鹿野さんの人物評です。マックスで10キロの減量をして、わざと視力を落とすコンタクトをつけたうえで、眼鏡姿になった大泉洋の姿を見て、鹿野さんの友人でありボランティアでもあった人物は思わず「鹿野がいる!」と語ったそうです。

今まで、ありそうでなかったこの役どころに挑戦した大泉は、クランクアップで鹿野と別れることがツラいと語ったほどです。大泉の新たな代表作として、今後も語られていくことでしょう。

難病モノは笑いに包んで

© 2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

難病モノというジャンルがありますが、一見簡単に見えて実は非常に扱いが難しいジャンルです。

元々、物語がまとう空気には必然的に悲壮感が含まれてしまいます。この流れに飲み込まれてしまうと、ただただ悲しいだけの物語になってしまいます。実話ベースではあれば結果としてモデルの方が亡くなってしまっていることも往々にしてあり、悲劇のドラマにしかなりません。

この流れをどうさばいて見せるかが、映画の作り手としての腕の見せどころです。ジョセフ・ゴードン=レヴィットの『50/50 フィフティ・フィフティ』(2011)や、ドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします』(2018)などが好例でしょう。

もちろん病に対してを不要で、不適切なふざけ方は厳禁ですが、“悲喜劇”という言葉もあるように、悲しい事実は笑いに包んで見せることでより物語が深みをまして、観る側の心に残るのです。

About the author

OsoneRampo

村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年目を越えた映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在作品の配給・宣伝、イベント運営に携わる一方で各種記事を執筆。