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アクション映画色パワーアップも、シビアな世界観は健在『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』

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© 2018 SOLDADO MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

メキシコの麻薬カルテルを描いた『ボーダーライン』(2015)の続編。ベニシオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、ジェフリー・ドノヴァンといった前作キャストのほかに、新キャストとしてイザベラ・モナー、キャサリン・キーナーらが抜てき。

『ウインド・リバー』(2017)で長編映画初監督を務めたテイラー・シェリダンこん身の脚本が輝く、新時代のサスペンスアクションだ。

『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』あらすじ

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アメリカに密入国してくるメキシコ人の数は増加の一途。そして手引きをしているのは巨大麻薬カルテルだった。

ある日、テキサス州カンザスのスーパーマーケットで自爆テロが発生。犯人は中東のテロリストの疑いがあり、CIA工作員のマット・グレイヴァーは政府の命を受けて調査に乗り出す。その結果犯人たちはメキシコ経由で入国した疑惑が上がり、米国政府はメキシコ犯罪カルテルを弱体化させる作戦に出る。マットは旧知の中であり、カルテルに家族を殺され復讐に燃える元検事の暗殺者アレハンドロに協力を要請。とある麻薬王の娘イザベラを敵対組織の犯行に見せかけて誘拐し、犯罪組織間での抗争を勃発させようとする。

しかし、カルテルの権力はメキシコの公権力にまで及んでおり、マットのチームは警察から襲撃を受けてしまう。米政府は問題を避けるために作戦があったことをもみ消すようマットに非情な命令を下してくる。そしてアレハンドロとイザベラは敵襲により、メキシコ国境付近に取り残されてしまい、2人の奇妙な逃避行が始まる……。

監督ステファノ・ソッリマの手腕

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前作「ボーダーライン」はレベルの高い傑作だったが非常に奇妙な映画で、主人公だと思っていたエミリー・ブラント演ずる捜査官が後半は完全に事態の蚊帳の外に置かれた無力な存在となり、ベニチオ・デル・トロ演ずるアレハンドロが全てにカタをつけるという歪なバランスの話になっていた。モヤモヤするがそれもメキシコ麻薬戦争の闇の深さ、実態の掴めなさを表しておりテーマに誠実な映画だったと思う。

今作では、前作で話を引っ張っていたマットとアレハンドロが主軸に置かれ、アクション映画色も強くなっている。しかし、前作と同じく乾いたシビアな世界観は健在。メガホンを受け継いだマフィアの本場イタリア出身ステファノ・ソッリマ監督のより直接的な暴力描写も炸裂する。敵も味方も容赦なく死んでいくのだ。

末端の人間たち

本作に出てくる登場人物はみんな、組織の末端の人間であり、切り捨てられる側の存在として描かれている。

頼れる存在に見えるマットですら、合衆国という巨大な権力に汚れ仕事をやらされ、彼らの都合で振り回される。マットが戦う麻薬カルテルの人間も画面に出てきて殺されるのは下っ端の者だけ。

家族を養いたいだけの少年ミゲルでさえも、カルテルの裏仕事の世界に取り込まれてしまうのだ。

麻薬王の娘イザベラも、自分の父親がどれだけ恐ろしいことをしているのかも知らず、巻き込まれた事態に怯え続ける。中盤にある激しい銃撃戦も撃ち合っている当事者たちの目線ではなく、巻き込まれるイザベラの目を通して描かれており、ヒロイックさは排除されてひたすら恐ろしい場面になっている。

善人は誰も出てこない

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米国政府と麻薬カルテルという巨大な組織に翻弄される人々。しかし、唯一どちらからも自由な存在であるアレハンドロだけが己の信念に従って行動し続ける。彼はカルテルへの個人的恨みも超えて麻薬王の娘を守る。

そんなアレハンドロの姿を通して事態に絶望していたマットも戦うことを選ぶ。善人は誰も出てこない。しかし、一片の矜持を残した人間たちの物語。さらなる続編では地の底で這いつくばってきた者たちの反撃があるかもしれない。

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About the author

madwhite

映画好きの平凡な会社員です。僕なりの考察と感想を書かせていただきます。 とにかく素晴らしい映画を作ってくれる映画界の才人たちに感謝。そんなに素晴らしくない作品の作り手たちにも感謝。公開してくれる人たちにも感謝。 どんな映画でも必ずいいところがあり、問題点もあると思うのでそこは正直に思ったままを書かせていただきます。