子供時代との「別れ」と「再会」を描く『プーと大人になった僕』

『プーと大人になった僕』 (C)2018 Disney Enterprises, Inc.
『プーと大人になった僕』あらすじ
子供の頃、100エーカーの森でぬいぐるみのクマのプーやその仲間たちといつも一緒に遊んでいたクリストファー・ロビン。彼は引越しと同時にプーたちと別れ、子供から大人へと成長していき、家庭を持って仕事に追われる日々を送っていた。
彼が中年になった時、突如プーが再び彼の目の前に現れる。100エーカーの森の仲間たちがプーの目の前からいなくなってしまったので探して欲しいというプー。クリストファーは仕事が忙しい中それに付き合い、プーを疎ましく思っていたが段々と少年の心を取り戻していく。
そしてとあることがきっかけで今度はプーたちがクリストファー・ロビンを助けようと行動を起こすことになるのだが……。
原作のイメージを忠実に実写化
この映画はプーというキャラクターに対してどれだけ思い入れがあるかで評価が大きく変わってくる作品である。
本作はとにかくアニメ版や原作の雰囲気を忠実に再現してくれている。冒頭のディズニーのシンデレラ城のロゴが古い絵本タッチに変わり、A・A・ミルンの原作の挿絵で今までのプーたちとクリストファーの思い出が流れ、淡い暖色系の映像の中で食卓を囲む100エーカーの森の面々を見るだけで何故か涙腺が刺激されて仕方ない。
プーたちは単にいつも通りユルいやり取りで突っ込み不在のボケ会話をしているだけ。しかし「あの通常運転のプーたちがそこにいる!」というのがファンにはたまらない。
声、仕草、おなじみのテーマ曲、100エーカーの森を完璧に再現した美術。常に“秋っぽい”あの風景を見るだけで子供の時に見ていたプーの世界が脳裏にも蘇ってくる。
そしてプーと別れ過酷な大人の世界へ進んでいくクリストファー・ロビン。この映画ではプーとの別れ=子供時代との別れという風にはっきり描かれている。
忘れていた子供時代
就職、結婚、そして第二次世界大戦に徴兵され、帰還。その後、子供が生まれ、会社では中間管理職へ。短いカットのつなぎでクリストファーロビンの半生がどのように変わっていったかが的確に観せられ、冒頭10分程度だけで観客の心は揺さぶられ続ける。
そこに現れる数十年前と何にも変わっていないプー。プーが人々にずっと愛され続ける理由はこの“変わらない”という点にあると思う。
アニメでも本作でもプーの声は“おっさん”である。彼はクリストファーと違って、もう未熟のまま完成されているのだ。人々の心の中にある永遠に変わらない子供時代の象徴。
仕事に追い詰められたクリストファーの前にプーが現れるのは、実は彼の願望なのではないか。
ふと、子供時代の記憶が急によみがえって戸惑うことがあるように、最初はプーに戸惑うが段々子供時代を取り戻していくクリストファー。
ここだけでも感動的なのだが、本作が素晴らしいのは子供時代の心を取り戻したことで現実でもプラスのフィードバックがあること。
大人らしさだけでも子供らしさだけでも人生は上手くいかない。時には童心に戻ることで思わぬ突破口があるものなのだ。
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