1. TOP
  2. REVIEW
  3. 都市伝説を題材にした良質サスペンス ― 『スレンダー 長身の怪人』ただのPOVホラーと侮るなかれ

都市伝説を題材にした良質サスペンス ― 『スレンダー 長身の怪人』ただのPOVホラーと侮るなかれ

By -

© MMVIII GRACESAM FILMS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

突然だが、あなたは“スレンダーマン”をご存知だろうか?

異様なまでに背が高く、細身なカラダに黒い背広を羽織り、顔は蒼白でのっぺらぼうという、海外では有名な異形の怪人である。スレンダーマンは2009年頃にインターネット上で広まり、今ではアメリカで最もポピュラーな都市伝説のひとつとして、世間一般に広く浸透している。日本でいうところの“くねくね”、あるいは“テケテケ”のようなものか。

そんなスレンダーマンは現在に至るまでに様々なコンテンツに登場し、今もなおその人気は衰えることを知らない。まさにアメリカを代表するメジャーな“UMA”なのだ。さて今回は、そんな恐怖の怪人スレンダーマンを題材にした、POV方式採用の良質なサスペンス・ホラーをご紹介していきたい。

『スレンダー 長身の怪人』あらすじ

© MMVIII GRACESAM FILMS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

さまざまな町でニュースを追っている記者のサラとカメラマンのマイロ。彼らはある小さな町で銀行に差し押さえられた家の中で1本のビデオテープを見つける。中には黒いスーツの男と謎の記号が映っていた。その家にかつて住んでいた家族を見つけるが、彼らはその男に監視されていることに気付き…DIGITAL SCREEN』より引用

人気Webシリーズを『ドント・ブリーズ』の製作総指揮が長編映画化

本作は、スレンダーマンをベースにしたYouTubeのミニシリーズ『Marble Hornets』を基に作られた。累計7700万以上の視聴回数を記録した同シリーズは、今もYouTube上で観ることができる。昨年話題を呼んだホラー・スリラー映画『ドント・ブリーズ』(2016)からジョー・ドレイクを製作総指揮に迎え、同Webシリーズの特色を残しつつ、見事な長編映画を完成させた。

© MMVIII GRACESAM FILMS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

YouTubeに投稿された『Marble Hornets』は、POV方式を採用したリアルなモニュメンタリーが人気を博し、現時点で実に87本もの映像が投稿されている。映像は1分のものから15分までと様々だ。本作を鑑賞する前に、ぜひご覧になって頂きたい。

全編POV方式で撮影された戦慄のサスペンス・ホラー

POV方式とは「Point of View Shot」の略で、日本語に直すと「主観撮影」ないしは「視点撮影」などと訳される。近年では割とオーソドックスな撮影方式として、多くの映画で見ることができる。例えば、低予算ホラーの先駆けとなった『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)や、J・J・エイブラムス製作の『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008)などがそれにあたる。「ビデオカメラで撮影された実際の記録映像」と説明すれば分かりやすいだろうか。

はっきり言ってしまえば、この手法自体は古くから取り入れられているため、目新しさという点ではそれほど革新的なことはしていない。報道カメラマンのマイロが持つハンディカムの映像を通して進行する本作は、不可解な失踪事件を徐々に紐解いていくサスペンス要素に重きが置かれており、純粋なホラー映画のテイストとは少し遠い印象を抱いた。

とはいえ、サスペンス仕立てのモニュメンタリーとしては良質な作品であることに疑いの余地はない。事件を追う中で男女三人の三角関係も発覚し、思わず先が気になる展開を巧みに演出している。

スレンダーマンを演じるのは、超個性派俳優のダグ・ジョーンズ!

劇中に登場するスレンダーマンは、まさに長身で線が細く、黒い背広をきちっと着込んだ“想像通り”の姿でスクリーンに現れる。都市伝説で語られているそのままの姿が描出されているのだが、なんてったってその身長は2mに近いくらいのデカさだ。一体、誰が演じているのか。答えは超個性派俳優のダグ・ジョーンズ、その人だ。

© MMVIII GRACESAM FILMS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

ダグ・ジョーンズと言えば、『パンズ・ラビリンス』(2006)で迷宮の番人パンと、怪物ペイルマンというふたつの役柄を演じ、『ヘルボーイ』シリーズでは青い半魚人エイブ・サピエンを熱演するなど、人間ではない役を多々演じることで有名だ。

本作においても彼は192cmという驚きの背丈を生かして、スレンダーマンの不気味さを見事に表現している。森の中にひっそりと立ち尽くす様子は、スレンダーマンの特徴をしっかりと捉えており、ひとつひとつの描写からは異様なオーラを放っている。まさに、これ以上にないくらいの適役と言っても過言ではないだろう。次回はどんな怪物を演じてくれるのか。ダグ・ジョーンズの今後の活躍にも自ずと注目がいきそうだ。

映画『スレンダー 長身の怪人』はオンライン上の映画館「デジタルスクリーン」にて上映中。

【デジタルスクリーン】ウェブサイトはこちら

【スレンダー 長身の怪人】上映ページはこちら

※現在、PCのみで視聴可能です。

About the author

Hayato Otsuki

1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「海外ドラマboard」など。得意分野はアクション、ファンタジー。